理工学研究科 准教授(物質科学部門・物質基礎領域)
テニュアトラック普及・定着事業
原子核物理(実験)、加速器科学
令和7年4月1日 着任
原子核構造、質量、元素合成、イオン源、加速器
原子核の質量を通じて原子核構造や元素合成過程に関する研究を行っています。
原子核の質量は個々の陽子と中性子の質量の和よりも小さくなります。この質量の減少度合が大きいほど陽子と中性子の結びつきが強くなり安定した原子核となります。系統的に質量を測定すると、どの原子核が強く結合していて、安定であるかが分かります。
系統的な質量測定からは、ある原子核から陽子や中性子を1つもしくは2つ取り出すのに必要なエネルギーも導き出すことが可能です。
このエネルギーが負になると原子核として存在できないため、原子核の存在限界を探ることも可能です。
また質量は、重い元素の合成に関与する中性子捕獲反応、光分解反応、ベータ崩壊といったすべての反応において、反応速度を決める物理量であり、
「身の回りにある元素、特に金や白金などの重い元素がどこでどのようにして合成されたのか?」という謎の解明にも役立ちます。
私が質量測定の主な対象としている原子核は、重い元素の合成に関わっていると考えられている原子核です。
これらの寿命は数十ミリ秒以下と非常に短いため、短時間で高精度に質量を測定するために、世界で3番目となる重イオン蓄積リングを開発して、質量測定を開始しました。多くの原子核の質量を測定し、安定性や反応速度を決定することによって、核構造・元素合成の解明に寄与できればと考えております。
また、イオン源や加速器技術の社会実装を目指して、小型の加速器の開発にも取り組んでいます。
現在手がけているのは、電子加速器を利用した高エネルギーX線CTシステムの開発で、企業と共同で開発を進めています。